StyleRoom Tech · Vol.04

セミオーバーフィットも知らないのに、
ハーフバルーンフィットがわかるはずがない

語彙をどれだけ細かく分けても、閉じない理由

前回の記事で、言葉だけでは無理だというところまで来ました。そうなると自然に浮かぶ考えがあります。語彙をもっと精密にすればいいのでは?

オーバーフィット、セミオーバーフィット、ルーズフィット、リラックスフィット、ワイドフィット…。こうして細かく分けておけば、いつかはすべて収まるのではないか。

実際に数えてみました。収まりません。そして、その収まらなさ方が興味深いのです。

ちなみにセミオーバーフィット(세미오버핏)は、セラー37人が69回使っている言葉ですが、画像分析モデルは一度も使ったことがありません。ハーフバルーンフィット(하프벌룬핏)はなおさらです。

01 · Count

モデルは18種類で書き、セラーは98種類で書きます

商品説明1万5千件あまりから、「○○フィット」という形の表現をすべて抜き出して数えました。画像分析モデルが書いた下書きと、セラーが確認して手を入れた最終版を分けて見ています。

18モデルが使う
フィット表現の種類
98セラーが使う
フィット表現の種類
5.4倍その差

これは2回以上登場したものだけを数えた値です。1回しか出てこないものまで含めると32種対205種になり、そこから誤字や文法上の断片を取り除いても161種が残ります。

実際にはどんな言葉なのか

よく使われる順に並べるとこうなります。カッコ内は登場回数です。

ルーズフィット(2,535) · オーバーフィット(1,987) · スリムフィット(1,279) · ワイドフィット(826) · バルーンフィット(179) · レギュラーフィット(178) · 一直線フィット(일자핏)(129) · マッスルフィット(99) · セミオーバーフィット(69) · 落ち感フィット(떨어지는핏)(51) · ストレートフィット(49) · オーバーサイズフィット(46) · クロップフィット(38) · エイフィット(가오리핏)(37) · バギーフィット(36) · ボックスフィット(36) · フレアフィット(33) · 基本フィット(기본핏)(24) · タイトフィット(22) · パンツフィット(바지핏)(22) · バミューダフィット(20) · 正フィット(정핏)(19) · ブーツカットフィット(18) · 袖フィット(소매핏)(17) · ボクシーフィット(17) · ジョガーフィット(14) · セミルーズフィット(10) · セミクロップフィット(10) · セミワイドフィット(10) …

最初の4つで全体の大部分を占めます。ところが面白いのは5番目からです。バルーン、エイ、バギー、フレア、ブーツカットのように、形がはっきりした服ほど後ろのほうに並んでいます。使われる頻度は低くても、使われるときはその服の正体そのものです。

さらに正フィット・基本フィット・パンツフィット・袖フィットのような言葉も混じっています。どの辞書にも載っていない、セラーがただそう呼んでいる言葉です。

もっと目を引くのはこちらです。セラーが使う表現の84.9%は、モデルが一度も使わない言葉です。重なる部分は、思っていたよりずっと小さいのです。

02 · The Tail

いくつか覚えればいい、という話ではありません

種類が多くても、よく使う数個さえ押さえればほとんどカバーできるなら問題にはなりません。それも確認しました。

全体の何%をカバーするにはモデルセラー
50%2種2種
80%3種4種
90%4種12種
95%5種27種
99%11種123種

半分までは同じです。どちらもルーズフィットとオーバーフィットがあれば足ります。ところが上に行くほど分かれていきます。モデルは5つで95%に届くのに、セラーは27個必要です。

99%まで行くと11個対123個です。辞書をどれだけ大きくしても、端のほうから新しいものが出続けるということです。

03 · Everyone Their Own

ほとんどの表現は、一人のセラーしか使っていません

では、その尻尾にある表現は誰が使っているのか。表現ごとに何人のセラーが使っているかを数えてみました。

その表現を使うセラー数モデルセラー
1人だけ46.9%62.4%(128種)
2~4人9.4%19.0%
5~19人15.6%12.2%
20人以上28.1%6.3%(13種)

セラーが使う表現の62.4%は、そのセラー一人しか使っていません。そして20人以上で共有されている表現は13個だけです。

モデルは正反対です。一つのモデルが書いているので当然表現は共有され、28.1%が20人以上にまたがっています。

共通の語彙は13個ほどで、残りはそれぞれが作った言葉です。辞書を作るなら、その13個は収められても、残りは収めようがありません。まだ作られていないからです。

04 · How They Make Them

作り方があります

新しい表現は、でたらめに生まれているわけではありません。規則が見えます。既存の表現の前に、強さを表す言葉を付けるのです。

「セミ」だけで10種類あります

セミオーバーフィット(69回・37人) · セミルーズフィット(10・5) · セミクロップフィット(10・6) · セミワイドフィット(10・6) · セミフィット(3・1) · セミマッスルフィット(3・1) · セミレギュラーフィット(2・2) · セミバルーンフィット(2・2) · セミスリムフィット(2・2) · セミバギーフィット(2・1)

この10種類すべて、モデルは一度も使ったことがありません。ところがセラーは53人が使っています。セミオーバーフィットだけで37人が使い、69回登場します。

別の方向に作ることもあります。

🔴 すでに作った言葉の上に、さらに重ねます

ハーフバルーンフィット(하프벌룬핏):バルーンフィットだけれど、そこまではいかないもの

ルーズオーバーフィット・ビッグサイズオーバーフィット・スーパーオーバーフィット:オーバーフィットよりさらにオーバーなもの

ルーズエイフィット・ワイドカーブジーンズフィット・ビッグワイドフィット:二つの形を重ねたもの

既存の表現で足りなければ前に言葉を付け、それでも足りなければ付けたものの上にさらに付けます。オーバーフィット → ビッグサイズオーバーフィットのように、強さがどんどん上がっていきます。

特にハーフバルーンフィットは、前回の記事にそのままつながります。バルーンフィットという言葉がすでにあるのに、「それではないけれど似ているもの」を呼ぶ言葉が別に必要だったのです。それほど形の違いは、セラーにとって大事なのです。

一人や二人の癖ではありません。互いを知らない53人が、それぞれ同じ造語法にたどり着いています。「オーバーフィットだけれど、そこまではいかないもの」を呼ぶ言葉が必要で、みんな同じやり方で作り出したわけです。

しかもこれは「セミ」だけの話ではありません。強さを付ける言葉8種類をすべて数えてみました。

付ける言葉セラーが作った表現モデルが使うもの
セミ-10種・113回・53人0種
ビッグ-4種0種
スーパー- · ハーフ- · クロップ-4種0種
ルーズ- · ワイド- · タイト-複数0種
オーバー-3種・48回1種

8種類のうち7種類で、モデルは一つも使っていません。「オーバー」だけが例外で、1種類(オーバーサイズフィット)を使っています。この造語法は、セラーの側だけで起きていることです。

語彙は固定されたリストではなく、生み出され続けるものです。辞書をどれだけ大きくしても、辞書を作る速さより、セラーが言葉を作る速さのほうが上です。

05 · What They Fix

そして、実際にいちばん直される場所でもあります

セラーがモデルの下書きを確認するとき、どの項目をいちばん多く直しているかも見てみました。

項目修正された割合
フィット・シルエット68.0%
フィット58.3%
トップスのデザイン51.4%
ディテール41.5%
素材・カラー40.7%
カラー23.2%

フィット系がいちばん上で、カラーがいちばん下です。色はモデルが見てもわかるけれど、フィットはそうではない、ということです。前回の記事で見たのと同じ話です。平均の内側にあるものは当てられても、外側にあるものは当てられません。

そしてフィット表現が入っている文書だけに絞ると、46.3%でセラーがその表現を書き換えています。2件に1件の割合です。

まとめ

辞書の問題ではありません

「フィットの語彙をきちんと定義すればいい」というアプローチがなぜうまくいかないのかが、数字で見えてきました。

語彙は追いつく対象ではありません。辞書を完成させようとした瞬間には、もう新しい表現が生まれています。しかもその表現の多くは一人のセラーのものなので、共通の辞書に収めること自体がつじつまの合わない話です。

そうなると、方向は一つに絞られます。語彙を追いかけるのではなく、そのセラーがその言葉で何を指しているのかを、そのセラーの服から学ぶこと。前回の記事の結論と同じところにたどり着きます。ブランドごとに別々に存在する何かが必要なのです。

そして、こうした表現が作られ続けているという事実そのものが、私たちの側の材料でもあります。新しい語彙が生まれるということは、新しい服が出てきたということであり、それは巨大モデルがまだ知らない服です。